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あままこのブログ

役に立たないことだけを書く。

若者"だけ"や非正規雇用"だけ"の利益を代表する声が政治に反映されない絶対的根拠

政治と運動

「非正社員」の本当の味方はだれか (1/2) : J-CAST会社ウォッチ
まぁ、記事そのものへの反論ははてなブックマークでされているて、それだけでまぁ十分な内容なので省略する。
僕が注目したのはこの一文

非正規雇用の人たち、特に氷河期世代の若者たちは、既存の労組や左派政党とは距離を置くべきだ。でないと、彼らの政治活動や既得権擁護のために骨の髄までしゃぶりつくされることになる。逆に正しい声を増やすことさえ出来るなら、応えてくれる人は政治の世界にもきっといるはずだ。

これに対して僕は断言する。いいや、絶対に応えてくれる人は居ないねと。
何故か。これはもう、統計を見れば一目で分かっちゃう事なんだなぁ。

ケース1:「若者の声」

例えば、上記の声を若者の声(利益)を代弁してくれる政治という風に仮定してみよう。よくいわれる「若者v.s.老人」という対立軸だ。この論者も、まぁそれに近い立場だろう。
では、そもそも若者と老人って、一体どれぐらいの比率でしょうか?
これは統計を見ればあっさり分かることですね。
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仮に、若者を20歳〜39歳という風に定義してみようか。そうすれば、今の39歳は1970年生まれだから、大体氷河期世代*1と言われる人たち(1971年生まれ〜)にも大体重なる。
じゃあ、20歳〜39歳と、40歳以上の人たちの総数を比較して、ついでにパーセンテージに直してみよう。

20歳〜39歳 約3249万9千人 約31.6%
40歳以上 約7033万4千人 約68.4%

この数字を見て、どう思うかな?
3分の1以下だよね?ひょっとしたら、憲法改正で「今年で39歳になった世代から下の世代は、全員奴隷として基本的人権を剥奪します」なんて条文を改正案にされても抵抗できない、それぐらいの少数派な訳だ。
更に、これに世代ごとの投票率(年齢が高いほど投票率は高い)や一票の格差(田舎の票の方が都市部の票よりも重い。そして、田舎の方が年齢層は高い)なんてことを勘案すればどーなるか……?まぁ、今回は面倒なんでそこまでしませんが。
もちろん、これに対して「でもこれだって将来は逆転する」なんてことも言えるでしょう。まぁ、ただでさえ少子高齢化なわけですから、その歩みはとてつもなくスローペースですが、それでも子は生まれ老人は死ぬわけですから、やがては氷河期以降の世代が多数派になるのは、確実です。
でも、それまで待てんの?僕はまだ21歳ですから、なんとか10年〜15年程度なら耐えられますが、今の氷河期世代は、そんなの耐えられるのかなぁ……?いや別に耐えるっていうんなら良いんですけどね。自分たちの世代が多数派になるまで、ひたすら搾取されることに耐え続けるって言うんなら、まぁ、マゾだなぁとは思うけど、僕は何も言いません。

ケース2:「非正規労働の声」

同じ事は、上記の記事で言っている「正しい声」とやらを若者の声(利益)を代弁してくれる政治という風に仮定してみても言える。これもよくいわれる「非正規雇用v.s.正規雇用」という対立図式なわけだけど、では、統計を参照してみよう。
統計局ホームページ/労働力調査(詳細集計) 平成25年(2013年)4〜6月期平均(速報)結果
これはちょうどPDFにパーセンテージがあったので計算無しで簡単にコピペできました(雇用者内での比率)。

非正規雇用 約34.5%
正規雇用 約65.5%

こっちは、なんとか3分の1は到達してるから、「非正規雇用者に対しては労働基本権を剥奪する!」なんて憲法改正はぎりぎり阻止できそうだねぇ。でも、憲法はそうでも、法律の条文で何とかするのはこの国のお家芸なわけで。ちなみに、衆議院の絶対安定多数は56.042%*2だそうだ。いずれにしろ、こっちも少数派なわけだ。
更に、上記の統計というのは本当に「雇用者全体に対する非正規雇用/正規雇用の割合」を述べたものにすぎない。どういうことかといえば、上記の統計の中には、選挙に行けない未成年の雇用(当然非正規雇用が多い。要するに学生のアルバイトだ)やら、専業主婦のパート(正規雇用の夫の収入が主な収入源である家庭においては、一体正規雇用と非正規雇用どちらが優先されるんだろうね?)も含まれてるし、更にいえばパートもしていない専業主婦なは逆に含まれていない。それらを勘案するとどうなるかというのは、面倒だからしないけれど。
もちろんこれももしかしたら将来は逆転するかもしれないよ?リンク先のPDFを見れば分かるけど、非正規雇用の率というのはどんどん上昇している。このまま産業構造の変化が進み、それこそ一握りの正社員と、その下で働く多数の非正規雇用なんていう、フランス革命以前のフランスみたいな状況になれば、そりゃあ非正規雇用が多数派になるわけです。でも、また同じ事を言うけど、それまで待てるの?更に言えば、僕はこのまま非正規雇用率がどんどん上昇するなんてこともないんじゃないかと考えている。ある一定の割合を非正規雇用が占めるようになったら、そこで上昇は止まっちゃうんじゃないかな。何だかんだいって、非正規雇用には任せられない仕事というのも一杯あるからね。そうなれば、一生非正規雇用は少数派のまま。国会である程度の議席を持って文句は言わせてもらえるかもしれないけど、自分たちの要求が通ることは絶対にない……まぁ、それがあなたたちのジャスティスというのなら、やっぱり僕は何も言いませんが。

○○"だけ"の声を代弁する限り、一生その声は反映されない。

色々厳しいことを書いたけど、別に僕は若者や非正規雇用者に「絶望しろ!」なんてことを言うつもりはない。そんなのはid:umetenにでも任せておけば良いんであって、僕が言いたいことは次のようなこと。

  • 若者だけや非正規雇用だけの利益を代弁するようなことを言ってちゃ駄目。若者も老人も正規雇用も非正規雇用も、全体が幸せになれるビジョンを提示しなければならない。

老人たちによって若者は搾取されている。だから若者の利益を代弁しなければならない。これは確かに正義だろう。正規雇用により非正規雇用が虐げられている。だから非正規雇用の利益を代弁しなければならないというのも、全くの正義だ。そのような正義の心を内に秘めるというのは、悪くない。だけど、もし正義によって政治が変わるんなら、今頃世界から戦争や軍隊はなくなっているし、差別も貧困もない、それどころか国境すらない世界が実現してるよ。
正義だけじゃあ政治は動かない。とくに、それが少数派の正義である場合は。政治を動かしたいんなら、多数派、というか全体を納得させるビジョンを持たなければ駄目なんだよ。「俺たちが幸せになるから代わりにお前ら不幸になれ」では絶対納得は得られない。
じゃあどうするか?僕は、この記事を書いた人が忌み嫌う、既得権益と対話するしかないと考えている。社民党や連合は確かに既得権益の代表であり、僕たちの完璧な味方ではないかもしれない。しかし、だからこそ、彼らと対話し、彼らと合同する、つまり、既得権益を含めた全体のためのビジョンを描く必要があるのだ。もちろん、そこで骨抜きにされたりしゃあ元も子もないでしょう。小林よしのりが『脱正義論』で描いたとおり、彼らの骨抜きにするテクニックはすごいものがあるから、それは十分に注意すべき。
でも、だからといって潔癖症的に彼らを嫌悪しててどうなるっていうのか?むしろ必要なのは、そういうテクニックを熟知した上で、それでも彼らのシステムの内側に入り込み、そして利用しようとする、そういう泥臭さなのだ。その泥臭さを手に入れない限り、いつまで経っても僕らは「正論厨」として嗤われ続け、搾取され続けるんじゃないかなぁと、僕は思うよ。

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/就職氷河期#.E4.B8.96.E4.BB.A3

*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/絶対安定多数