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あままこのブログ

役に立たないことだけを書く。

震災がれき問題に対し、一体何が答えられ、何が答えられていないか

震災がれき

環境省が推進するがれき広域処理の意味――前編:大量のがれき - はてなブックマークニュース
津田大介氏による、がれきの広域処理に対して、なぜがれきを被災地以外の場所で処理することが必要なのか、環境省などのがれき広域処理賛成派の立場からまとめた記事です。
私は、この記事に対して一定の評価をすると共に、一方でこれは不完全な記事であり、批判される点も多々あると考えています。
評価すべき点は、まず何よりも、今まで情緒的にしか語られて来なかった「なぜがれきを被災地以外で処理しなければならないか」ということについて、データを提示しながら、理由がまとめてあるからです。特に、「なぜがれきをそのままにしておいては駄目なのか」「がれきを広域処理すねことにどんなメリットが存在するのか」という、私が一番疑問に思っていた点について、説得力がある議論が展開されているように思えました。
そして次に、これがweb上で、検証可能な形で公開されていることです。これまでのネット上での震災がれきについての情報は、その殆どが震災がれき広域処理反対派の主張でした。なぜなら、がれき広域処理反対派はこれまで、きちんとまとめサイト*1などで、自らの「なぜがれきの広域処理に反対するのか」という主張をまとまった形で述べてきたのに対し、広域処理賛成派は、「ご協力をお願いしたい」とか言う内容のないコメントをマスメディアを通じて述べるが、具体的に何故「がれき処理が必要なのか」について、反対派のようにまとめサイトでまとめて主張するようなことはせず、ただ情緒的に、「がれき広域処理反対派は差別主義だ!」などというレッテル貼りをしたり、「放射脳」、「ワーワー教」などという揶揄を繰り広げるばかりだったからです。しかしこの記事は、そういうレッテル貼りや揶揄によって相手の主張を貶めようとするのではなく、賛成派の主張をまとまった形で提示し、そして反対派の人に、「これに対する反論をドシドシ述べて欲しい」というような開かれた態度をとっている。これはやはり賞賛すべきことだと思うし、これからのがれき広域処理に関する議論は、賛成派も反対派も、この津田氏のような、揶揄やレッテル貼りを決して行わない、開かれた態度で行われるべきだと思っています。
一方で、この記事には批判されるべき点も存在するといえるでしょう。最も批判されるべき点は、この記事が「公平でない」という点です。といっても、私はこの記事が環境省からの依頼で書かれたPR記事であること、それ自体は批判しません。なぜなら、そのことがきちんと明示されているし、がれき広域処理賛成派の主張が、ネット上でまとまった形で展開されることは今まで殆ど無かったのですから、きちんと予算を割いてライターに依頼しそれをネット上で掲載する。そのこと自体は、賞賛されるべきことであり、批判されるべきことではないと考えています。
私がこの記事を「公平でない」と評価するポイントは2つあります。一つは、この記事が環境省などのがれき広域処理賛成派からの取材のみによって書かれ、がれき広域処理反対派にも取材をしたり、あるいは、ネット上に多々あるがれき広域処理反対派のウェブサイトなどを引用・リンクすることが殆どなされていないことです。最終的な結論として、津田氏ががれき広域処理容認派側の立場にたつことはいいとしても、そこに至る過程では、きちんとがれき広域処理賛成派だけからではなく、がれき広域処理反対派からも意見を聞くべきだし、その過程を開示し、賛成派・反対派双方の立場・主張を記事に書くべきではないかと考えているのです。しかしこの記事ではそのようながれき広域処理反対派への取材や、がれき広域処理反対派の主張が具体的にどんなものであるか、URLなどのソースを付けて明示することがあまりなされていない。その点から。私はこの記事を「公平でない」と判断します。
また、どのような事情があったかは分かりませんが、この記事では、「なぜがれきの広域処理が必要なのか」という主張だけを前編として公開し、「広域処理による放射性物質拡散」については後編で提示するという手法が取られています。しかしそれはがれき広域処理のメリットについての情報だけを大々的に公開し、デメリットについてはみんなが忘れた頃にこっそり公開する、そんなスピンコントロールの一種であると勘ぐられても仕方のないように思います。例え前編の公開が遅れることになっても、がれき広域処理の問題と放射能拡散の問題は切っても切り離せない以上、前編と後編は、一度に公開すべきだったのではないかと考えます。
しかし、このような批判されるべき点を考慮に入れたとしても、これまでネット上で余り語られて来なかった、がれき広域処理賛成派のまとまった主張が明らかになったというのは極めて良いことであるということは、私は重ねて強調したいと思います。
この記事では、そのような貴重な情報を、更に生かすために、この記事のがれき広域処理賛成派の主張が、反対派の疑問や不安について、一体どの程度まで答えられていて、そしてどの程度は答えられていないものなのか、反対派のウェブサイトなどを参照しながら、検証していきたいと思います。

目次

答えられた問題

まず津田氏の記事で答えられたことについて、その答えを検証します。

Q1.がれきをそのまま仮置き場に置いたままにしておくとどんなデメリットがあるのか
反対派の疑問・不安
仮置き場にがれきを集めたのなら、例えそれが数十年かかっても、それを地元でこつこつ処理していけばいいのではないか?なぜ広域処理までして、急いでがれきを処理しなければならないのか
賛成派の回答
「がれきが片づくまで仮置き場の土地が利用できない」、「がれきを仮置き場に放置すると近隣住民の生活環境に問題がある」、「仮置き場のがれき山は被災者の心情を悪化させる」というようなデメリットが、がれきを仮置き場においておくままにするという選択肢にはある。

この記事では、この3つのデメリットの内、特に「土地利用」の問題について具体的に触れ、次のような、女川町の実態を示す画像を示し、「これだけの土地が、震災がれきのために利用できなくなっている」ということを示しています。

(津田氏の記事より引用)
この画像を見ると、確かに震災がれきの存在が、復興の妨げになっていることが分かります。
「生活環境の問題」は、津田氏の記事には明示されていませんが、次のような記事があります。
NEWSポストセブン|震災がれき 「有害物質で呼吸器系への影響リスクも」と医師

 がれき置き場のすぐ東側は石巻商業高校だった。反対の西側には、道路1本も隔てず約70戸からなる仮設住宅団地が隣接していた。
 このがれきの影響により、石巻商業高校では、昨年夏ごろに生徒たちの体調に異変が起きた。同校の上総通教頭が明かす。
「夏くらいまでは、3階くらいの高さのがれきが積まれ、校舎がL字型に取り囲まれていました。粉じんがすごかったので、生徒に50枚入りのマスクを配りました。それでも“目がかゆい”“頭が重い”と体調不良を訴える生徒が続々出て、ふたりの生徒が肺炎になったんです」
(略)
 がれき被害は、石巻日赤病院を訪れる患者の数にも表れている。同病院の矢内勝呼吸器内科部長によると、昨年は呼吸器疾患の患者が激増したという。
「がれきの中には有害物質や細菌があり、これが粉じんとなって浮遊します。いまはだいぶ収まりましたが、震災後2か月間で、ぜんそく発作による入院が例年の4倍に、慢性閉塞性肺疾患の症状が悪化して入院した患者が5〜7倍に増えました。がれきがある限り、呼吸器系への影響が生じるリスクが続くでしょう」

「土地利用」、「健康被害」の問題については、確かに測定できるデメリットとして存在するといえるでしよう。
ただ一方で、「仮置き場のがれき山は被災者の心情を悪化させる」というのは、私としてはピンと来ません。津田氏の記事には次のように書かれています

(3)の被災者心情は、「『積み上がった災害廃棄物を見ると震災当日と同じ心境になる』、『がれきを見ると心が沈む』といった地域住民の方々の気持ち」というもの。

このような被災者心情は重要な問題であると述べる方もいますが(瓦礫がそこにある意味 - 情報の海の漂流者など)しかしそのような主張が通るならば、逆に広域処理反対派が「とにかく震災がれきが自分の近くで処分されると、心が不安になってしまう」という主張をするのも可能になってしまいます。なぜなら心の問題は、それが単なる迷信やデマであったとしても生じることだからです。
心理的な不安というのは、確かに重要な問題ですし、それについては、カウンセラーをきちんと被災地に派遣するなど、心の専門家によって対処されるべきでしょう。しかしそれを震災がれきの問題に持ち出すのは、賛成・反対どちらの立場からだとしても、私は違和感を覚えるし、この問題に対する合意を形成不可能にしてしまうのではないかと、考えます。

Q2.なぜがれきを被災地で処理できないのか
疑問・不安
被災地に焼却施設を作って、そこで処分すればいいのではないか。
賛成派の回答
そのような焼却施設を作って、それによって処分をしている。しかしそれではおいつかない

これについては、記事で次のように書かれています。

しかし、これはあくまで津波の被害が甚大であった一部の自治体の話のようだ。現地での処理を目指す自治体もある。東北最大の都市、仙台市だ。
仙台市環境局は「自己完結型」のがれきなどの処理を目指し、1次仮置き場や2次仮置き場を一元化した「搬入場」を整備した。名取川から七北田川の海沿い、津波に襲われた松林を切り開き、宮城野区に1ヶ所、若林区に2ヶ所の搬入場を整備、仮設の焼却炉をそれぞれに設けた。焼却量は3ヶ所合計で1日あたり480トン。搬入場でがれきを分別し、50%以上のリサイクルを目指しつつ、リサイクル困難な可燃物を焼却している。
環境省の山本氏は、このような現地での処理状況も正直に語る。「多くの自治体は自分のところでやると言っています。そして、宮城と言っても地域によって違う。宮城県全体ではがれきは1500万トン以上あるわけですけれども、石巻ブロックの自治体は、300万トン近くの広域処理を希望しています。岩手県が全体でも478万トンくらいですから、石巻ブロックだけで岩手の半分以上にあたるわけですね。もちろん相当大きな中間処理施設や仮設の焼却炉も作っていて、来年度早々から処理はできるようになりますが、それでも全部は燃やせない状況なのです」

つまり、仙台市のような広い場所に焼却場を作ってはいるが、しかしそれでも追いつかないぐらいのがれきがあるということなのです。もちろんこれも時間をかければ地元で処理できますが、しかし時間をかければ書けるほど、先ほど述べたような「土地利用」、「仮置き場の安全・衛生管理」、「被災者の心情」という被害が生じる。だから、広域処理をすることによって、迅速な処理をしたいというのが、広域処理賛成派の主張なのです。

Q3.「がれきは地元で処理したい」という意見が被災地の人々からも出ているが、なぜ被災地の人々の声を無視するのか
疑問・不安
例えば陸前高田市の市長や岩泉町の町長など、他にも様々な記事(例:東京新聞の記事)において、「地元では別にがれきは復興の足かせになっていない」という地元の声が聞こえるが、にもかかわらず何故国は広域処理に拘るのか
賛成派の回答
地域差が大きく、がれきが邪魔になってないところもある一方で、がれきが邪魔になっているところもある。「自分の所ではがれきは邪魔になっていない」と言う人も、「がれきが邪魔になっている所のがれきは広域処理すべきだ」と言っている

津田氏はこのような地域差の例として、災害廃棄物処理の進捗状況という復興庁のデータを用い、それをグラフにまとめて示しています。

(津田氏の記事より引用)
そして、陸前高田市の市長のFacebookにおいても、「基準をさらに厳しくして、本当に安全が確認された瓦礫だけを限定で被災地以外で処理をしていただきたい」ということが言われていると示しています。

Q4.具体的にどれだけの量のがれきを処理しなければならないのか
疑問・不安
ただ「がれきを早急に処理しなければならない」とだけ言われても、具体的にどれぐらいの量瓦礫があるのか、それに対し、被災地のがれきの処理能力はどれぐらいかを示してもらわなければ、その主張を検証できない。本当は、そんなにがれきは多くないのではないか?
賛成派の回答
がれきの総量は2045万トンであり、これを全て被災地で処理するには11年〜19年かかる。

津田氏の記事では次のような環境省の説明を引用しています。

先頭にあるのは「災害廃棄物は被災地で処理できないのですか?」という質問だ。答えは「地震と津波の被害により、被災三県の沿岸市町村においては、約2200万トンもの膨大な量の災害廃棄物(岩手県で通常の約11年分、宮城県で通常の約19年分)が発生」したとして、「既存の施設に加え、仮設焼却炉を設置するなど、日夜その処理に取り組んでいますが、処理能力は依然として不足している状況」としている。

そして、政府の方針では、これを「2014年3月末」までに処理したいのだと述べ、よってがれきの広域処理が不可欠であるとしています。
ただ一方で、その記事の下段では、地域差があるとして「震災がれきの全てが広域処理が必要なわけではない」ということも述べているわけです。とするならば、2045万トンという数字だけを強調してもしょうがない気もします。重要なのは。2045万トンの内、一体何割が広域処理を必要とするか。広域処理を必要とする震災がれきは何万トンなのかではないでしょうか?このような疑問は、はてなブックマークにおいてもなされています。
はてなブックマーク - 環境省が推進するがれき広域処理の意味――前編:大量のがれき - はてなブックマークニュース

id:tari-G
量はあってもまとまりのない構成に加え前編だけでは評価のしようがない。そもそも広域処理分は全体の2割に過ぎぬ筈なのに全体の94%が未だ未処理という摩訶不思議な現状の説明がここにもない。

id:tari-G氏の「全体の2割」という数字が本当ならば。2045万トンという数を強調するのは、誇大広告なのではないかとも思えます。

答えられていない問題

次に、津田氏の記事では触れられていないけど、がれき広域処理反対派から提示されている疑問・不安、そして、私自身が疑問に思うことをまとめます。

Q5.なぜがれきを処理して被災地を「復興」させなければならないのか
疑問・不安
確かに震災がれきは、その被災地の土地利用を妨げるなどの様々なデメリットが存在する。だがそもそも、津波被害にあった場所を復興させる必要があるのか?もはや津波被害にあった地域は発展が望めない地域として放棄し、さっさと高台移転など、本当に必要な復興策を行うべきではないか。
賛成派からの回答
発見できず

「高台移転するのならば、その場所の土地を早期に利用可能にする必要はないのではないか?」という意見は、例えば東京新聞で池田こみち氏などが述べていますし、2ちゃんねるの震災がれきにまつわる議論でも、名無しの意見としてよく出る「本音」です。

私見
このような選択肢は、つまり津波被害にあった地域を見捨てるということですから、倫理的に同意できないのは確かです。しかしそのような選択肢が存在するのは確かである以上、そのような選択肢も真剣に検討・議論する必要はあるでしょう。
Q6.がれきを、被災地内の別の場所(例:福島第一原発の近く)に破棄するというのはできないのか?
疑問・不安
確かにがれきを今の仮置き場において置くままにするのはよくないだろう。だが、わざわざ人口が密集している大都市にもってこなくてもよいのではないか。そうではなく、例えば今後数十年は人の立ち入りが禁止されるであろう福島第一原発の周辺に全てのがれきを捨ててしまえば、別に慌てて処理する必要もなくなるのではないか。
賛成派の回答
発見できず

このような意見は、ラジオである学者が言っていたという情報もありますし(ただし伝聞情報でしかないので、ソースは紹介しません)、私自身、素朴に考えると、「置き場所がないんなら福島第一原発の半径20km圏内にでもおいておけば良いんじゃないか」ということは思います。
馬鹿げた議論かもしれませんが、しかし一方でこれが無理だとする主張も、特には提示されていません。

Q7.がれきを埋め立て「森の防波堤」にするという案が出ているが、なぜその案を採用しないのか
疑問・不安
宮脇昭氏は「震災がれきを海岸線に埋め、そこに森を作り防波堤にしよう」という案を提示している。このような方法を使えば、震災がれきを広域処理しなくとも地元で有効活用できるのではないか
賛成派の回答
河野太郎氏のブログ記事において、「そのようなことに使えるがれきは、全体のがれきの極僅かである」という回答がなされている

宮脇昭氏の「森の防波堤」という構想が最近広域処理反対派によってよく主張されています。その内容はこのようなものです。
震災がれきを活用、東北に「森の防波堤」を 横国大の宮脇氏に聞く :日本経済新聞

 ――震災がれきを活用した「森の防波堤」とは。
 「震災で生じたがれきのほとんどは、家屋などに使われていた廃木材やコンクリートだ。これらはもともと自然が生み出したエコロジカルな『地球資源』だ。捨てたり焼いたりしないで有効に活用すべきだ」
 「海岸部に穴を掘り、がれきと土を混ぜ、かまぼこ状のほっこりしたマウンド(土塁)を築く。そこに、その土地の本来の樹種である潜在自然植生の木を選んで苗を植えていけば、10〜20年で防災・環境保全林が海岸に沿って生まれる。この森では個々の樹木は世代交代しても、森全体として9000年は長持ちする持続可能な生態系になる」

このような「森の防波堤」に震災がれきを用いれば、わざわざ震災がれきを広域処理する必要がないというのが、広域処理反対派から出ている意見です。
しかしこれに対して、河野太郎氏は次のように述べています。
震災がれき Q&A その2|河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり

Q がれきを埋めて、そこに木を植えて森林をつくることもできるのではないですか。
A はい、仙台空港の近くなどで、宮脇昭氏等の協力を頂いたそういう計画があります。
ただ、有機物を埋めると、ものによっては硫化水素が発生したり、様々な問題が起きますので、そこに埋めることができるのは、コンクリートなどの無機物です。焼却すべきごみの量にはあまり影響がありません。

ただここでは、では具体的にどれぐらいの量のがれきが有機物で、どれぐらいの量のがれきが無機物なのかということは書かれていません。

私見
このような「森の防波堤」を作るにはかなり長い準備期間と労力、そして資金が必要なように思えます。そうすると、地元でこつこつ処理していくのと同じぐらい、がれきの仮置き場周辺の住民に被害を及ぼし、復興の妨げになるだろうし、また復興に回すべき資金を浪費してしまうことにもつながりかねないという問題もあると思います。震災がれきを減らすことにはつながっても、震災がれきの広域処理をなくす「銀の弾丸」にはなりえないのではないかというのが、私の見解です。

ただ何れにしても、この案については、賛成派・反対派双方が、より詳細に検証をしていく必要があるのではないかと考えます。

Q8.がれきを広域で処理するというのは、東京のがれき処理業者の「利権」なのではないか
疑問・不安
広域処理を進める背景には、地元のごみ処理場を使ってがれき処理をすれば、地元のごみ処理業者に利益を分け与えることが出来るという、「利権」が背景にあるのではないか。だとしたらそれは、金のために市民を震災がれきによる様々な被害に晒すということではないか。
賛成派の回答
津田氏の記事では「わざわざ税金を利用して高いコストをかけて被災地から全国に運び、広域処理を進める背景には、産業廃棄物処理業者との癒着や利権があるのではないかといぶかしむ声もある」という風に、このような疑問に触れる文章があるが、それに対する答えはない。一方、河野太郎氏によれば「被災地の業者を使うようにしているので、利権や利益誘導ではない」と述べられている。

津田氏の記事でも触れられているように、広域処理の背景に、それによって利益を得る産廃業者との癒着があるのではないか、ということは多く指摘されています。例えば原発と放射能@初心者専用 - がれきのウソホントにおいては

処分しているのは東電のグループ会社
http://www.tgn.or.jp/tokyorp/
その経緯を会見で質問すると東電が逆切れ。質問したフリー記者は出入り禁止に……
http://live.nicovideo.jp/watch/lv69931605(動画 1時間33分〜)

2012.2/14 都の瓦礫受け入れ事業 公社評議員に東電役員
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=1622
事業を都から委託されている(財)東京都環境整備公社の評議員メンバーに、東京電力執行役員である影山嘉宏氏がいることが分かった

まとめると……
量が勝手に増えてて、がれきの内容も変わってて、検査も適当なものがどんどんやってきて、
反対すると知事に黙れと言われる。……そして東電がまた儲かる。

という記述がありますし、抗議殺到でも受け入れ表明が後を絶たない本当の理由 がれき受け入れは利権 - nanohana ナノハナ | 地球と7代先のこどもたちを元気にしてゆく情報発信サイトには

がれき受け入れは巨大な利権なのです。

国はがれき処理に1兆円の助成金予算を組んでいます。
がれきを受け入れた自治体は、処理費用を被災県に請求することができます。そして、被災県はそれを国に請求することができるのです。こうして国のがれき処理助成金は最終的に受け入れを行う自治体や業者へと支払われるのです。

実際の支払い金額はどのくらいになるのでしょうか?

下記に静岡県の記事があります。この記事によれば、静岡の自治体に支払われる助成金は、がれき1トン当たり6万6666円です。
この金額は受け入れたがれきを燃やし、焼却灰を埋める費用であって、がれきの送り出し側の選別やサイズをそろえたり、細かく砕いたりといった費用は含まれていません。
受け入れ側は選別の終わった木材を受け取り、燃やして、焼却灰を処分場に埋めるだけです。焼却灰は一般の処分場に埋めていいことになっています。この処理に1トン6万6666円もの助成金が支払われるのです。

という記述があります。
津田氏の記事にはこのような「利権ではないか」という声への回答はありませんが、河野太郎氏の記事には次のような記述があります。
震災がれき Q&A その2|河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり

Q がれき処理は、東京のゼネコンの言い値の高価格で決まっていて、現地の雇用にもつながっていないのではないでしょうか。
A 宮城県はがれき処理のプロポーザル入札を終えていますが、県の予測した価格よりも全て安い価格で落札されています。地元業者が入ったJVでなければ応札できませんし、建設に関する発注などは地元の業者に出すことが求められています。

私見
震災がれきの処理の問題に「利権」が絡んでいるのはたしかにそうだと思うのですが、しかしがれきを処理することに伴うコストを考えると、「利権」がある程度生じるのはやむをえないと思います。そこで過度にクリーンさを求め、震災がれきの処理に一切利権が絡まないようにすれば、それは、のがれき処理に参加する「旨み」が無くなってしまうということですから、がれき処理の早期実現には悪影響をおよぼすのではないでしょうか。震災がれきの処理によって一体誰が得するか、それが透明化されれば、利権が存在する事自体は、しょうがないのではないかと考えます。
Q9.なぜ震災がれきに関する政府の議事録が公開されていないのか
疑問・不安
広域処理の方針を決めたのは、環境省の「災害廃棄物安全評価検討会」という部会だが、この部会の議事録が公開されていない。これでは、一体広域処理についてどのような賛成意見・反対意見が出たのかが分からない。なぜ公開していないのか。
賛成派の回答
速記録の作成には費用がかかるので途中で止めた。録音データが存在するが、公開するかは現在議論中

これについては、弁護士の紀藤正樹氏、社民党党首の福島みずほ氏などが疑問を呈し、「議事録・録音データを公開しろ」と言っています。
紀藤正樹@masaki_kito 弁護士 東日本大震災による震災瓦礫の広域処理に対するTweetまとめ - Togetter
福島みずほのどきどき日記 災害廃棄物の検討会への質問主意書
そして、福島みずほ氏の質問に対する政府の回答では、議事録は費用がかさむため製作しなかった。速記録はないが録音データがあり、現在公開を議論中ということだそうです。

私見
何で議事録を作成しなかったわけがわからないし、録音データがあるんだったらさっさと公開しろと思います。
Q10.なぜ危険とされる放射能の閾値が上がったのか(放射能の問題)
疑問・不安
震災前は、「放射性セシウム濃度が、1kgあたり100ベクレル以下」であれば大丈夫とされていたが、震災以降は「1kgあたり8,000ベクレル以下なら大丈夫」という風に基準が変わっている。なぜ震災前の基準で判断しないのか
賛成派の回答
環境省のQ&Aによれば、100ベクレル/kgは「廃棄物を安全に再利用できる基準」であり、8,000ベクレル/kgは「廃棄物を安全に処理するための基準」であるから

このような疑問は札幌市の上田文雄市長からも提示されていますし、弁護士の紀藤正樹氏も賛同しています。
紀藤正樹@masaki_kito 弁護士 東日本大震災による震災瓦礫の広域処理に対するTweetまとめ - Togetter
東日本大震災により発生したがれきの受入れについて/札幌市

また放射性物質についてですが、震災以前は「放射性セシウム濃度が、廃棄物1kgあたり100ベクレル以下であれば放射性物質として扱わなくてもよいレベル」だとされてきました。しかし現在では、「焼却後8,000ベクレル/kg以下であれば埋立て可能な基準」だとされています。「この数値は果たして、安全性の確証が得られるのか」というのが、多くの市民が抱く素朴な疑問です。全国、幾つかの自治体で、独自基準を設けて引き受ける事例が報道され始めていますが、その独自基準についても本当に安全なのか、科学的根拠を示すことはできてはいないようです。

これに対して、環境省のQ&Aでは次のような文章があります。
よくあるご質問 | 広域処理情報サイト 【環境省】 -津波による災害廃棄物処理(がれき)を全国で-

Q13.クリアランスレベルの100ベクレル/kgと指定廃棄物の基準8,000ベクレル/kgの2つの基準の違いについて教えて下さい。
A.100ベクレル/kgと8,000ベクレル/kgの二つの基準の違いをひとことで言えば、100ベクレル/kgは「廃棄物を安全に再利用できる基準」であり、8,000ベクレル/kgは「廃棄物を安全に処理するための基準」です。

私見
はっきり言って環境省の答えは答えになっていないでしよう。今までは100ベクレル/kgだったのに何で現在は8000ベクレル/kgなのか。もし、100ベクレル/kgの基準だと、多くのがれきが引っかかり、広域処理ができないのだというのならば、その旨をきちんと公表した上で、「放射能による微小なリスクはあるが、しかしそれによって生まれる、被災地の復興というベネフィットの方が大きいと考えられる為に、広域処理をお願いしたい」と、はっきり言うべきだと考えます。
Q11.がれきの放射能を計測しようとした人が止められた。これは、本当は放射能ががれきに付着しているが、それを隠したいからではないのか(放射能の問題)
疑問・不安
宮城県女川町からのがれき受け入れに関しては、それを視察する人々ががれきの放射能を測定することを禁じられた。もしがれきが本当に放射能汚染されていない安全なものならば、その測定を止める理由はないのではないか
賛成派からの回答
不正確かつ複数の測定値が生じて混乱するため(災害廃棄物処理支援の取材等のルールについてより)

これは、柳ケ瀬裕文という民主党の都議が女川町からのがれきを視察していた時にツイートしていたことです。
東京へ運ばれる震災ガレキを柳ヶ瀬都議が追跡レポート - Togetter

瓦礫の仮置き場に到着しました。放射線量は測定するなとのお達し。 http://t.co/ffqbzLLL

これについてtwitterでは次のような反応が寄せられたそうです

@BlessMoment 【速報】今、岩手から東京へ災害廃棄物が東京貨物ターミナルに到着。取材中。ただし、各社私物のガイガーカウンターでの測定は禁止とのこと。これはおかしい。 http://t.co/iCvVq57V

@morecleanenergy 今日の宮古がれきの取材、報道陣が測定するのを禁止した模様。いまだに官報のみを流す姿勢に終始している。終わっている。この国の役人は、情報源の多元化が必要なことがどうしても理解できないらしい。

私見
不正確な測定によって混乱が生じるというが、もし不正確な測定だとするならば、その測定のやり方を問いただして、その測定は不正確だと主張すればいいのであって、測定を禁止するのは明らかにおかしいのではないでしょうか。そのようにして、市民が自分で情報を集めることを邪魔するから、市民は政府に対し不信感を抱くのだと思います
Q12.がれきの放射能をサンプリング調査しても、サンプリングから放射能を持ったがれきが抜け出ることはないのかあるのか、あるとしたら、確率はどれぐらいか(放射能の問題)
疑問・不安
がれきの放射能を調べるには、がれきの一部をサンプリングして、そのサンプリングから調査するしかないが、サンプリングには、それを抜け出るものがあるのではないか。そのサンプリングの網に、人体に害を及ぼしかねない放射能を含むがれきが含まれる可能性はないのか。あるとしたら、そのリスクは
賛成派の回答
発見できず

この問いは、既存の広域処理反対派の問いというより(同じような問いをしている人はいるのかもしれないけど、発見出来なかったので)は、私が疑問に思う問いです。
震災がれきについて広域処理賛成派がよく主張するのは、震災がれきの送り手である岩手県や宮城県は、東京都や神奈川よりもむしろ放射能汚染が少ないという点です。
例:[www.taro.org/2012/02/post-1159.php:title]

さて、黒岩知事が受け入れを表明した震災がれきの発生地の岩手県宮古市は、福島第一原発から260km離れています。川崎市や横浜市は、むしろ宮古市よりも原発事故地に近いぐらいです。
福島第一原発からの距離を比べてみると、
宮古市  260km
横浜市  253km
川崎市  242km
相模原市 254km
横須賀市 267km

そして、2012年1月28日の空間放射線量率の最大値は
宮古市  0.052マイクロシーベルト/時間
茅ヶ崎市 0.047マイクロシーベルト/時間

つまり、宮古市は、福島第一原発の事故の影響を神奈川県よりも強く受けたわけでもありませんし、現在の放射能濃度は神奈川県とほぼ同じレベルです。

しかしこのような主張は、放射能はうすーく一様に分布したのではなく、局所局所に降下したという事実を無視しています。いわゆるホットスポットです。
震災と原発以降、多くの調査により放射能値が測定され、ホットスポットと呼ばれるところが多数あることが判明しました。つまり、宮古市のある地点での空間放射線量の最大値が、茅ヶ崎市のある地点での放射線量の最大値を下回っていたとしても、宮古市の別の地点の空間放射線量の最大値は、もしかしたら茅ヶ崎市を上回るとんでもない値である可能性もある、ということです。
故に、震災がれきが放射能に汚染されていないことを示すのに際して、距離や、空間放射線量の値を比べることにほとんど意味はありません。重要なのは、震災がれき自体の放射線量がどれぐらいあるか、それを調べることなのです。
しかし、震災がれき全てを一つ一つ調べるわけにはいきませんから、当然その調査はサンプリング調査、つまり震災がれき全体から標本を取り、その標本の放射線を測定することによって、震災がれき全体が汚染されていないかどうか推定する必要が存在します。
そのサンプリングがどのようになされているかについては、環境省のQ&Aに次のような説明があります。
よくあるご質問 | 広域処理情報サイト 【環境省】 -津波による災害廃棄物処理(がれき)を全国で-

Q4.災害廃棄物の一部を測定しても安全だと言えないのでは?
A.放射性物質の拡散は、原発からの距離に応じて一様ではなく、地域差が大きいことから、搬出側の自治体の一次仮置場において災害廃棄物の放射能濃度の確認をすることを基本としています。具体的には、あらかじめ重機等で攪拌をした災害廃棄物の山の中でなるべく均一に分散するように選定した10カ所以上の採取位置からサンプルを採取し、災害廃棄物の平均的な放射能濃度を測定し、安全に処理可能であるか確認します。さらに、二次仮置場から災害廃棄物を県外に搬出する際に、線量計で当該廃棄物全体を対象に周辺の空間線量率を測定し、バックグラウンドの空間線量率より有意に高くなるものがないことを確認します。このように災害廃棄物のサンプルの放射能濃度測定に加え、当該災害廃棄物全体の空間線量率も測定することにより、二重に安全性の確認を行います。

しかし、これはやり方を説明しているだけで、「安全」かどうかの答えにはなっていません。重要なのは、このサンプリング調査によって、放射線量の高い震災がれきを測定しない可能性がどれだけあるか、それをきちんと開示することです。
「絶対に紛れ込まない」ということは、それが全数調査ではないサンプリング調査である以上、ありえません。もちろん、それは天文学的に低い確率なのかもしれませんが、だとしてもそこに放射線量の高い震災がれきが含まれる確率は、「ある」のです。
ですから重要なのは、「100%放射能汚染された震災がれきは紛れ込まない」と嘘を言うのではなく、きちんと誠実に「放射能汚染された震災がれきが紛れ込む可能性は0.00...%であるが、これは極めて低いリスクであり、環境省はこれを無視出来ると捉えるため、震災がれきは安全である」と誠実に言い、人々の理解を求めることだと、私は思います。

Q13.検出されないレベルの放射能でも、それを集めて燃やせば人体に有害なレベルの放射能にまで濃縮されるのではないか(放射能の問題)
疑問・不安
例え焼却前は1kgあたり4000ベクレルだったとしても、焼却でそのゴミが10分の1になれば、1kgあたり40000ベクレルになる。そうなれば、1kgあたり8000ベクレルが許容範囲であるという基準は越えてしまうのではないか。
賛成派の回答
数字の計算がデタラメ(id:kuzu_masato

武田邦彦氏は次のように述べて、放射線量の基準がゆるいと批判してします。

2) 「量」と「濃度」の錯覚に騙されないように

東京都のある区では「瓦礫の汚染度は低いので大丈夫です」と言い、たとえば1キログラムあたり4000ベクレルなどの基準を設けています。第一の問題点は、この数値は焼却前です。焼却によって体積が10分の1になりますから、濃度は10倍になり4万ベクレルとなります。4万ベクレルはセシウムの場合、法律で除去しなければならないレベルですから、もともと汚染されていない場所に「汚染物質を持ち込む」という結果になり、法律(このブログに示してあります)としても違法行為になります。

これに対してはてなブックマークでは
はてなブックマーク - 武田邦彦 (中部大学): しっかり反論:瓦礫引き受け・・・量と濃度の錯覚

id:kuzu_masato 本当にこの人理系の教授なの?数字の計算のデタラメさがひどい・・・。焼却したら濃度が上がるって・・・むしろ灰となって飛散しないかどうかを気にしようよ。全然反論になってません。墓穴を掘っているだけ。

という反論がされています。

私見
正直良くわかりません。武田邦彦氏については、以前地球温暖化懐疑論を口にしているのを目にして、あまり信用できる人ではないという印象を持っています。しかしid:kuzu_masato氏の反論は、ただ「デタラメ」と言うだけで、何故デタラメかきちんと示していない、情緒的なレッテル貼りに過ぎないとも思います。1kgあたり800ベクレルという記述については、より詳しい説明が不可欠だとは、言えると思います。
Q14.がれきの放射能を除去する装置とされている「バグフィルター」は本当に効果を発揮するのか(放射能の問題)
疑問・不安
震災がれきを焼却炉で燃やすと、震災がれきに付着していたセシウムが気化して空気中に漏れ出す。このようなセシウムは、ダイオキシン対策として焼却炉に設置されているという、バグフィルターによって除去できるというが、しかし専門家には、バグフィルターでもセシウムは除去できないという主張もある。
賛成派の回答
既存の設備ではバグフィルターで除去できていることが確認されている。

ツイッターをまとめよう - Togetterにおいては、放射能を除去するバグフィルターが、本当は機能しないのではないかという疑問がまとめられている。それに対して、環境省のQ&Aは、次のように述べている。
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Q7.既存の焼却施設で災害廃棄物を燃やすと、セシウムは気化して排ガスとともに漏れ出てしまいませんか?
A. ダイオキシン対策等のため、焼却施設には、排ガス中の微粒子の灰(ばいじん)を除去する高性能の排ガス処理装置(バグフィルター等)が備わっています。廃棄物の焼却に伴い発生する排ガスは、この排ガス処理装置の手前で200℃以下に冷やすことが法律※1で決められています。焼却後の排ガスが冷却室で冷やされると、放射性セシウムは微粒子の灰に移行するので、このばいじんを排ガス処理装置で捕 獲することで、放射性セシウムをほぼ100%除去し、大気中への放射性セシウムの放出を防ぐことができます。
実際に、廃棄物に含まれる放射性セシウム濃度が高く、広域処理の対象とはならない汚染廃棄物を焼却している施設においても、排ガス中の放射性セシウムの放射能濃度はほとんどの施設で不検出となっており、検出された場合でもモニタリングの目安としている濃度限度(134Csの濃度(Bq/m3)/20(Bq/m3)+137Csの濃度(Bq/m3)/30(Bq/m3)≦1)を大きく下回っている※2ことが確認されています。なお、モニタリングの目安としている濃度限度は、その濃度のガスを0歳から70歳までの間吸い続けた時の被ばく線量が一般公衆の許容値(年間1mSv)以下となる濃度です。

私見
これについては、バグフィルター疑問視派の意見がtogetterでしか見つからなかったのでよく分からない。togetterのまとめと環境省の説明だけを比べれば、環境省の説明のほうが説得力があるように思える。
Q15.放射能検査をしていないがれきを紛れ込ませないような監視体制は存在するのか(放射能の問題)
疑問・不安
東北から全国に震災がれきを大量に運搬するということは大規模な事業であり、大規模な事業では当然どこかでミスが生じる。そのようなミスによって、放射線が測定されないまま震災がれきが送られてきたり、放射能で汚染されていると分かった廃棄物が間違って広域処理されることを防ぐ、監視体制は構築されているか
賛成派の回答
発見できず。

これも既存の広域処理反対派の問いからは見つけられなかったが、私が疑問に思ったことです。
当たり前ですが、このような大規模な広域処理、しかも原発事故によって広範囲に放射能が拡散した状態での広域処理というのは、今まで前例がありません。これまでの震災の広域処理では、震災がれきが放射能のような毒性を持つということはありえなかったのですから。
そこで気になるのが、果たして環境省が主張する「検査したがれきだけを広域処理するシステム」が、果たしてミスなく機能するかです。というより、これだけ大規模でしかも前例のないシステムならば、必ずミスは起こり得ます。どんどんがれきを送らなきゃいけないという中で、故意・過失を問わず、まちがってがれきを検査しないまま広域処理したり、検査して放射能が検出されたにもかかわらず広域処理してしまうというケースが、必ず出てくるだろうと考えられるのです。
故に、そのようなミスがあることを前提とした上で、ミスを早期発見できる監視システムを国が責任持って構築することも、震災がれきに対する不安を解消するためには、必要不可欠ではないかと考えるのです。具体的には、震災がれきのトレーサビリティを確立し、その震災がれきがどの仮置き場の、どの区画から運ばれてきたか、ということまできちんと監視できる、そんなシステムが必要です。しかし、震災がれきは安全であるとし、リスクを開示しない国の姿勢を見ると、そのようなシステムが構築されているか、私は不安に感じます。

Q16.もし、震災がれきによって何らかの健康被害などが生じた時に、それを把握する監視体制はあるのか。また、もしそうなった時の補償はどうなるのか(放射能の問題)
疑問・不安
震災がれきにもし万が一、放射能が含まれており、それにより周辺の住民に健康被害が生じた場合、それが震災がれきの影響であると発見できるような監視体制、また、そのような健康被害が生じた場合の補償体制はどうなっているか
賛成派の回答
発見できず

これも私自身が抱く不安です。
はっきり言って、どんなに万全な安全策を取ったとしても、震災がれきが完全に安全であると言い切ることは不可能であると思います。限りなくリスクをゼロに近づけることはできますが、ゼロそのものであるということはできないでしょう。たとえリスクをゼロにできたとしても、それを市民が納得するのは無理です。震災がれきと同じように、さんざん「絶対に安全」と言われてきた原発が、あのように事故を起こしたのですから。
むしろ重要なのは、例えそれが限りなくゼロに近いとしても、リスクがあるということを認めた上で、そのようなリスクが実際に起きた時に、どのような事後策が取れるかをきちんと決めておくことです。そのためには、リスクが実際に現実のものとなってしまった時に、それを発見できるような監視体制を構築し、そして更に、リスクによって被害を受けた人をきちんと補償する制度を整えておくことです。
具体的には、例えば現在福島県では「県民健康管理調査」というのを行うことによって、原発事故の健康への影響を調査しようとしています。*2。このような調査を、震災がれきを焼却する施設の周辺でも行い、中立的な視点から震災がれきの健康被害が存在するかどうかを科学的に測定できる機関の設立。そして、そういう機関が健康被害の可能性を認めた場合には、国が責任をもってその健康被害を救済するという法制度が必要だと、私は考えています。

Q17.がれきに携わって作業する人の放射線防護はどうなっているのか(放射能の問題)
疑問・不安
もし震災がれきから放射能が検出された場合は、広域処理は中止されるが、しかし作業していた作業員はその時点で放射能を浴びているのではないか。そのような作業員の放射能に対する防護体制はどうなっているか
賛成派の回答
発見できず

このような疑問は原発震災廃棄物・広域処理問題@ まとめ - トップページの各ページにて提示されてします。

Q18.焼却場周辺の農作物に対する風評被害が生じるのではないか
疑問・不安
例え震災がれきによる健康被害が本当になかったとしても、しかしそれを人々が信じなければ、震災がれきが焼却している周辺の農作物を忌避するような現象が起き、風評被害が起きるのではないか
賛成派の回答
発見できず

これは福島県での焼却についての話ですが、NHK教育の「ETV特集・ネットワークでつくる放射能汚染地図」で、次のような発言が放送されました。
文字おこし(最終回)『NHK ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」〜福島原発事故から2ヶ月〜』:ざまあみやがれい!

「河内、風評で、今度河内の野菜、米も売れなくなる。」
「こんなの持ってきたっちゃ」
「農家いじめだ。とんでもない! こりゃ絶対反対! 皆さん反対ですね?」

震災がれきについても、これだけ健康被害に関する不安が叫ばれている以上、今のまま震災がれき広域処理を進めれば、風評被害が発生することが用意に想像できるわけです。

私見
このような風評被害を出来る限り防ぐためにも、市民と対話し、震災がれきのリスクを誠実に説明することで、震災がれきに対する不安を取り除くことが求められていると思います。以前twitterで震災がれきについて、広域処理賛成派と議論をしていた際に、「いくら議論したって不安は取り除けないんだから、橋下市長が決断したみたいに、それぞれの地方自治体の首長が独裁的に、自分の町で震災がれきを処理すると言うべきだ」ということを言う人が居ました。しかしこのように合意形成をせずに独裁的に震災がれきの広域処理を進めれば、例え震災がれきにリスクがなかったとしても、このような風評被害が大きな損害を生み出すでしょう。故に、例えその道程がどんなに長く面倒なものだったとしても、私は独裁的に震災がれきの広域処理を進めるのではなく、きちんと津田氏の記事のような形で説明をし、議論をしていく中で、震災がれきの広域処理について人々の合意形成を、ギリギリまでやる必要があると考えます。
Q19.放射能以外のさまざまな健康に悪影響を与える物質への検査・規制はされるのか
疑問・不安
放射能がれき以外についても、アスベストやヒ素など、様々な有害物質が震災がれきには含まれている可能性がある。これらの有害物質に対する規制や制限はどうなっているか
賛成派の回答
発見できず

原発と放射能@初心者専用 - がれきのウソホント

放射能以外にも…… アスベスト飛散の危険   海底のヒ素、津波で岸に   有害物質が基準値超え

私見
しかしこれらの問題は別に今回の震災がれきに限らず、通常の廃棄物においても生じるわけで、それに対して適切な防護策はとられているのではないかと推測します。

まとめ・私見

ここまで、自分が震災がれき広域処理反対派のwebサイトを見て、彼らが提示している疑問・不安を参照し、それに更に自分が抱いている疑問を足して、19の疑問・不安にまとめました、そしてそれに対し、津田氏の記事で答えられている点については、その答えが妥当なものであるかを検しようし、津田氏の記事において答えられていない問題については、環境省のQ&Aや河野太郎氏のQ&Aを参照にしながら、検証していきました。
当然これは、正直言って最近まで震災がれきに全然興味がなかった私がまとめたものですから、賛成派・反対派双方から見て、不備が多々あるものだと思います。更に言えば、自分の立場は、後の記事で述べますが、「4つの要望をきちんと考慮した上でならば、がれきの広域処理は容認する」という立場であり、一方twitterなどではがれき広域処理反対派と仲良くすることが多い、完全に中立ではない偏った立場です。ですからその偏りによって記述が不公平になっている部分も多々あると思います。ですからこの記事については、反対派・賛成派双方からの、忌憚のない意見・批判・反論を望みます。反対派からみれば、「この記事は答えになっていないようなことを答えとして扱っている」「この重要な問題が見過ごされている」という点が多々あるでしょうし、一方賛成派からすれば、「この疑問・不安は悪魔の証明であり答える必要がないものだ」「この疑問・不安にはこういう明確な答えが存在するのに、この記事ではそれを無視している」といった点が多々あるでしょう。そのような点については、どしどしブログのコメント欄やtwitterやはてブなどで寄せて頂ければと思います。
ただそこで一点だけお願い。これまでの震災がれきについての議論においては、自らの主張を論理的に述べて主張すると言うよりは、ただ相手を「馬鹿だ」と蔑み「差別主義者だ」などとレッテル貼りをし、「放射脳」、「ワーワー教」などと言って情緒的に相手を貶める、そういった手法が数多く見られました。しかし、そういう反応こそがここまで震災がれきに関する合意形成をこじらせ、賛成派と反対派が二項対立する状況を作り上げてしまっているです。ですから、私は「放射脳」「ワーワー教」などと言うような言葉を使ったり、論争相手を「差別主義者」などと根拠なく決め付ける人は一切無視しますし、そのような人の言葉は参照しません。はてブ・twitterなどで意見を述べる際も、そのような点に注意して頂ければ幸いです。
次に、私の私見をまとめます。この記事では19の問いに基づいて記事をまとめましたが、しかし私自身の印象としては、この問いの中にも、重要な問いと、重要でない問いがあると私は考えます。私が考える重要な問いは、以下の10個です。

  • Q1.がれきをそのまま仮置き場に置いたままにしておくとどんなデメリットがあるのか
  • Q3.具体的にどれだけの量のがれきを処理しなければならないのか
  • Q6.がれきを、被災地内の別の場所(例:福島第一原発の近く)に破棄するというのはできないのか
  • Q7.がれきを埋め立て「森の防波堤」にするという案が出ているが、なぜその案を採用しないのか
  • Q9.なぜ震災がれきに関する政府の議事録が公開されていないのか
  • Q10.なぜ危険とされる放射能の閾値が上がったのか
  • Q11.がれきの放射能を計測しようとした人が止められた。これは、本当は放射能ががれきに付着しているが、それを隠したいからではないのか
  • Q12.がれきの放射能をサンプリング調査しても、サンプリングから放射能を持ったがれきが抜け出ることはないのかあるのか、あるとしたら、確率はどれぐらいか
  • Q15.放射能検査をしていないがれきを紛れ込ませないような監視体制は存在するのか
  • Q16.もし、震災がれきによって何らかの健康被害などが生じた時に、それを把握する監視体制はあるのか。また、もしそうなった時の補償はどうなるのか

これらの問については、今後津田氏の記事や、津田氏の記事でなくても、15億円掛けてなされる環境省の広報の中で、きちんと説明されていくことを望みます。逆に、人々の情緒に訴えて何も説明しないような広報は、津田氏の記事で引用されていた長野県の阿部知事と同じように、無駄だと思っています。政府が市民をきちんと信じ、リスクもさらけだした上で、しかしそれによるベネフィットが大きいことを説明して理解を求める。そして市民も、情緒的に「放射能嫌い」とか「東北かわいそう」という感情だけで判断するのではなく、政府やその他様々な情報を理知的に摂取・判断し、リスクとベネフィットを比較して自らの態度を決定し、討議に参加していく。そしてその討議で合意形成を図っていくことが、必要だと考えています。
最後に、これは強調すべきことなので何度でも言いますが、津田氏の記事に感謝を。この記事では、19の問い、放射能の問題を除けば11の問いに対し、4つの問いにしか津田氏の記事は答えられていないと判断しました。それは、がれき広域処理賛成派からのみの取材であったがために仕方ないことですが、しかしだからこそ、やっぱり津田氏はがれき広域処理反対派からの取材も行い、双方の言い分を載せた記事にすることが必要だったのではないかと考えます。しかしだとしても、これまで殆どネット上にはなかったがれき広域処理賛成派のまとまった主張を紹介したこと、そしてそれにより、4つの疑問に対し回答を提示したことは、やっぱり議論の質を向上するという意味で、素晴らしい仕事であると思います。

参照リンク

この記事では以下のwebページを参照しました。賛成派・反対派様々な意見があります。
私としては、賛成派こそ反対派の意見を参照し、そのような意見に自分がどう答えるかをきちんと考えるべきであり、一方反対派も、賛成派の意見こそを参照し、それにどう答えるか考えるべきだと思います。

変更履歴

2012/03/31 21:16

id:fut573氏の指摘を受けそれぞれの問いに番号を付けました。また、一部表記ゆれを修正。

*1:[http://www47.atwiki.jp/tsunamiwaste/:title]、[http://www10.atwiki.jp/nuclear_radiation/pages/25.html:title]、[http://togetter.com/li/239885:title]

*2:[http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=5398CD6ACF8F7C9B59450E4EBFDDB970?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24287:title]参照