LOFTのバレンタイン広告、案の定取り下げになったそうで。
ロフト、バレンタイン広告取り下げへ 女子の不仲描いて「女性蔑視」と指摘相次ぐ : J-CASTニュース
まあ、あれだけ炎上して「LOFTの商品は二度と買わない!」とかいう不買運動起こされれば、企業が怯えて広告を取り下げるのも当然でしょう。
しかしやっぱり納得がいかないのが今回の件についてのtwitterでの反応。
どうやらこの結果を受けてtwitter上のいわゆる「ネトフェミ」と呼ばれる人たちは勝利宣言をしているみたいですが、やっぱり彼女らの主張は僕にとっては首を捻らざるを得ないものでした。
なかでも一番イライラするのがこういう主張
ハッピーゆべ on Twitter: "ロフトのバレンタイン広告イラストもテーマもくそださ… これぜったいお上()のおっさん達がゴリ押ししたんじゃない?"
📛みんみん📛 on Twitter: "ロフトの炎上したバレンタインの広告絶対作ったのおっさんだろ。「ズッ友」とか「うちの彼氏」とか絶妙な死後なんだよ"
「ロフト 広告 おっさん」とかでTwitter 検索すりゃこの他にもこういう主張は山ほど出てきます。
要するに今回の広告は、ネトフェミたちの間では「女性蔑視のおっさんたちが発案した差別広告に、全女性が一丸となって対抗し撤回させた案件」として認識されているわけです。
でも、現実は違うわけです。
今回の広告のイラストを描いたのは、竹井千佳という “女性の”イラストレーターの方なんですよ。
しかも彼女は、この広告以前にも、こういう「女性たちの仲良しの裏にあるギスギスしたもの」をいっぱい描いてきた。というかそれがメインテーマとも言える人なわけです。
その瞳は悲しみを流しだす。愛とパワーを感じる竹井千佳画集『Sp:telling,(テリング)
もちろん、それを「男に媚びた名誉男性」とか言って批判するのは、そりゃネトフェミたちの自由でしょう。けど少なくとも、「女性蔑視のおっさんたちv.s.全女性」みたいな構図に持っていくのは端的に間違いであり、おっさんへの評判を不当に貶めるものである。そこのところは素直に謝ってほしいと、1おっさんとしては思います。
そして更に重要なのは、こうやって女性の中からも「女の絆(シスターフッド)ってそんなに美しくて正しいもの?それが時に自分たちを傷つけるものとして働くこともあるんじゃない?」という疑義が提示されていること、そのことにネトフェミたちは向き合うべきなんじゃないの?ということです。
今回のLOFT広告を受けて、twitter上では「対案」と称するイラストが多く投稿されました。
時田時雨*月田さん1巻発売中 on Twitter: "思わず2次創作しちゃった… #ロフト #バレンタイン #百合… "
でも、はっきり言いましょう。これらのイラストに、表現として素晴らしいと思える点は一ミリもありません。少なくとも竹井千佳氏が描いているような表現に比べれば、毒にも薬にもならない、陳腐な表現です。
なぜならそれらのイラストは、「仲のいい女の子って素晴らしいね」という、一般常識から一ミリも外れることのない、安全な表現だからです。
それに比べれば竹井千佳氏の表現は、多少毒かもしれませんが、よっぽど問題提起的であり、表現として見るべき部分があります。
そして更に言うなら、上記の「対案」と称するような表現は、誰も救いませんが、竹井千佳氏のような表現に救われる人は、いるでしょう。
これは男性とか女性とか関係ありません。人間の普遍的性質として、群れて行動すれば、そこには必ず同調圧力というものがうまれ、異質なものを排除しようとします。
特に学生時代というのは、その同調圧力がとても強いもので、ある人はそれを「友だち地獄」とすら呼んだりするわけです。
仲良しグループの素晴らしさ、楽しさばかりを誇示しようとする人間は、絶対見ようとしないものですが。
というかむしろ昔のフェミニズムは、こういう「一般に良いものとされているものの内実はむしろ醜悪なものである」という風に、一般常識の嘘を暴くものだったはずです。
それ故にフェミニストと呼ばれる人たちは孤独であったけど、むしろその孤独を誇っていた。「群れてしかものを言えない連中たちとは違うんだぜ」と、僕はそういうフェミニストたちを、カッコいいと思っていました。
ところが今のフェミニストはどうか。シスターフッドとか美辞麗句を駆使しながら、結局やっていることは、世間的に正しく、美しいとされていることをただ追認して、そこから外れた、今回の広告のような表現を集団でぶっ叩き、数の力で沈黙させる。そこでその表現の背後にどのような思いがあったのかを、真剣に考えようともせずに。
そんなネトフェミたちを見ていると、もはやフェミニズムとは世間の多数派の、抑圧の口実にしかなってないんじゃないかと、そんなことすら思いますね。