あままこのブログ

役に立たないことだけを書く。

「何者かになるため」には、自分自身の神になればいい

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最近、友人から「何者かになりたい」ということを聞き、改めて考え込んでしまった。

 

もちろん、このことに関しては散々ネットやらサブカルチャー(『何者』?「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」?)やらで語られてきたことだから、今更僕が何か新しい知見を出せるとは思えないのだけれど、でもこの問いが、そういう散々語られてきたことに関わらず、未だ解決せず、僕らの前に立ち塞がってきてしまうということもまた、事実なわけで。

 

考えてみると、「何者かになりたい」という願望には、二つの前提条件があるだろう。一つは、「人は『何者』かになれる」という可能性がそこでは想定されていて、にも関わらず本人の意識の中ではと思っているということだ。

 

ここでいう「何者」とは、僕の考えでは、存在することで世界に対し何か影響を及ぼす存在であることだと、言い換えることができると思う。そしてそれはおそらく、宗教的には「宿命」と呼ばれるものだ。神が世界に自分を存在させるのは、意図があるんだ。だからその意図に沿った行為をすれば「何者」かになれる。しかし今の自分が世界に何か影響を及ぼしているようには思えない。だから自分は「何者」かになれてないんだと。

 

つまり、「何者かになりたい」という問題を考えるとき、人はそこで無意識に神のような存在を前提としているのだ。自らを生み出し、そして自らを評価する上位存在を仮定しているからこそ、初めて「何者かになれているか」という問題は発生するのである。

 

だから、そのような神の存在を仮定さえしなければ、「何者かになりたい」という願望も自然と消えるかもしれない。つまり、自分は単なる世界の一部で、世界に影響を与えるような存在には決してなれないし、ならなくなんていい。ただ日々の生活を慎ましく生きていればそれでいいのだと。

 

以前、僕の記事を「イキリオタクの戯れ言」と批判した人がいました

srpglove.hatenablog.com

が、それはまさしくこのような観点からの言葉ということができるでしょう。自分が世界や大衆のような存在から遊離しているなんて思い上がるなと。ネットを眺めればわかるだろ、お前は結局世界・大衆の一部でしか過ぎないのであるから、身の程を弁えろということです。

 

ただ僕は、そのような、ネットを見て自分の凡庸さを思い知るという処方箋で、自分を含め、自意識をこじらせた「何者かになりたい」というサブカルたちがなんとかなるとは思えないんですね。なぜならその処方箋は、結局「人は『何者』かになれる」という可能性を否定できないからです。

 

確かにネットを眺めれば自分みたいな存在所詮量産型のオタクでしかないということはよく分かります。しかし一方でネットはまた、そのような量産型のオタクではない、本当の意味ですごい、「何者」かになってしまっているような人たちがいることも同時に見せつけてくるわけです。容姿端麗で人気声優でありながら、一方で共産趣味やらロリータやらサブカルに造詣が深すぎる人やら、自分で自分のことを美少女化した漫画日記を書いたら、無茶苦茶バズってる人とか、ネットは「何者かになれないお前たち」の巣窟である一方で、完全に「何者」かになってしまった人たちの檜舞台でもあるわけです。

 

だから僕は、ネットはむしろ「何者かになりたい」という欲望や、その欲望を拗らせた結果生まれる「自分はこんな特別な存在なんだ」という思い込みを、それを否定することによって飢餓感を植え付け、むしろ助長しているように思えてならないのです。

 

と言っても、もはや私たちはネットなしで生きていくことはできません。ネットによって囃し立てられる「何者かになりたい」という欲望を、それこそ犯罪とかアンモラルな行動によってではない方法で、いかになだめるか。

 

僕は、まず自分が自分自身に神であるということ。そう思い込んじゃうことが、むしろいいんじゃないかと思うんですね。

 

「何者かになりたい」という欲望が、時に他害や自害の衝動となってしまうのは、その「何者であるか」ということを認めてくれる、神的な存在を自分の外部に求めてるからだと思うんです。つまり、自分が自分自身のためではなく、誰かのために存在しなければならないとすることにより、その責任感に苦しみ、結果として誰かや自分を傷つけてしまうということがあるのではないかと。

 

だから、例えどんなに選民主義的と言われようが、まず自分が自分自身の神になることにより、「自分を存在させている」という一点で、自分は存在している価値がある「何者」であるんだと認めるということが、結果として穏当に社会を生きていく処方箋になるのではないかと、そう、今の僕はかんがえているのです。

 

・・・ということを、↓の曲が職場の有線で流れてるのを偶然聞いて、思ったりしている今日この頃。

ゴッドソング

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  • 発売日: 2020/04/03
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