あままこのブログ

役に立たないことだけを書く。

ムーミン問題は良問か悪問か論争まとめ

ムーミン』がどこを舞台にした物語であるかという問題がセンター試験で出され

  • この問題の正答が本当に正答といえるのか
  • センター試験の問題として良問なのか悪問なのか

を巡って、論争が巻き起こっています。

問題について

this.kiji.is
f:id:amamako:20180115221317j:plain

この問題は良問である・問題ないとする立場

blog.goo.ne.jp

  • ムーミンのことをまったく知らなくても解ける問題である
  • 「実生活・実社会と勉強のつながり」に気付くきっかけになる

blogs.itmedia.co.jp

  • 勉強が社会で役に立つのか?という疑問を持つであろう高校生へのメッセージが含まれている

d.hatena.ne.jp

  • 問題文前後の文脈から見て答えは明白であり、問題視するのは馬鹿馬鹿しい

この問題は悪問である・問題あるとする立場

www.sfs.osaka-u.ac.jp

  • ムーミン』がフィンランドを舞台としているものとは断定できない
  • 小さなバイキングビッケ』がノルウェーを舞台としているとも断定できない
  • この設問は解答不能である
  • フィンランド文化の多言語性、とりわけフィンランドにおいてはスウェーデン語のような少数言語の存在を無視する危険性を孕む設問である
  • 日本アニメがつくりあげたステレオタイプな北欧イメージを根拠とする今回の設問は -- 現地語を学ばなくても北欧の実像に迫ることができるといったような安易な発想を植え付けてしまい -- 日本社会に対しては、現地語情報に基づかないことで、多言語・多文化社会のようなリアルな北欧の実像から乖離したイメージを再び広げてしまう危険性を孕んでいる

新聞記事・ネットニュース等

www.asahi.com www.asahi.com nlab.itmedia.co.jp www.sankei.com www.sankei.com this.kiji.is www.nikkei.com

感想

ざっと見たところ、高校教諭や非研究者の間では「良問」と評価する声が多く、逆に研究者の間では「悪問」と評価する声が多いみたい。多分その背景には「わからない問題には安易に答えを出さない」ことを美徳とする、大学の学問の価値観と、「わからない問題でもとにかく答えを出す」ことを美徳とする高校までの教育や、実学の価値観の対立があるのかなーと思ったり。
僕自身の感想としては、「わからない問題はわからないと認める」ことこそが美徳だと思うので、そもそも断定することができない問題で断定することが要求されるこの問題は「悪問」だと思う。
ただ、そうは言っても、そういう悪問に備える学生を受験教育は作り出さなきゃいけないのは事実なわけで、だから高校教諭たちは、それが学問的にはおかしいことを認めつつも、受験テクニックで簡単に解くことができるこの問題が「良問」であると主張してるのかなーと推測します。
でもやっぱり僕は、個人的な好みから言えば、この問題を見たときに、何の疑問も持たず反射的に正答を答えられる人より、ちょっと立ち止まって「うーん……」と考え込んでしまう、そういう人のほうが、受験で不利だとしても「知性」ある人なんじゃないかと思うし、そういう人間こそを高等教育は育てるべきなんじゃないかと思うんだけどね。
そういう「立ち止まる知性」こそが、フェイクやデマがまかり通る日本に今必要とされるんじゃないか、とも。