あままこのブログ

役に立たないことだけを書く。

「ベスト・アニメ100」への意見をまとめてみた&僕が思うベスト・アニメ10

「ベスト・アニメ100」への意見をまとめてみた

というわけで、相変わらず盛り上がっています「ベスト・アニメ100」。ちょっと自分でも、一体どういう点が問題視されているのか、人々の意見が気になったので、togetterでまとめてみました。
togetter.com
ざっと見た感じ、否定派の意見は主に次の6つに大別されるようです。

  1. 一つのアニメだけ好きなファンたちが多重投票できてしまうのが問題だ
  2. 女性票が多すぎる
  3. 1期、2期、劇場版と分かれて投票しなければならない投票システムがおかしい
  4. 作り手や批評家たちを参加させたり、投票以外も加味したりするべきだった
  5. もっと普通の人々・非オタの意見も反映すべき
  6. 選ばれた作品が納得行かない

この中で僕の意見(前回の記事
amamako.hateblo.jp
参照)、4番の「作り手や批評家たちを参加させたり、投票以外も加味したりするべきだった」かなーと思ったりします。選ぶ人がある程度作品を知ってるからこそ、「たくさんの作品の中でもこれが一押しだよ」というのが参考になるんであって、それこそタイバニ以外全然アニメを見ない、というような人が「タイバニ最高!」と叫んでるとしたら、その意見にどれほどの価値があるのかなと思ったりするわけです。
あるいは、もしこれがベストアニメ100を決めるための投票ではなく、好きなアニメを投票させた上で、「このアニメ作品を好きな人は他にはこんなアニメ作品が好きなんだな」というような、アニメ好きのクラスタ分析をするというような企画なら、こういう投票方法でも文句はなかったと思うんですよね。ところが、せっかくたくさんの投票があったのに、明らかにしたのは単純な得票数だけと、あとはせいぜい性別・年齢といった単純な層別データだけ。あれだけ近年ビッグデータビッグデータ言われて、そして立派なソーシャル分析チームも持っているNHKなんだから、もうちょっと分析のやりようがあったんではないかとも、思ったりするわけです。

僕が思うベスト・アニメ10

さて、「じゃあそういう大層なことを言うお前は、じゃあどんなアニメを『ベスト・アニメ』に選ぶんだよ」というツッコミもそろそろ来そうなので、ここらで僕が思う「ベスト・アニメ10」を紹介してみます。*1自分が好きなアニメは以前、
amamako.hateblo.jp
という記事で紹介したことがあったので、ここでは自分の趣味は抜きにして、「教養としてどういうアニメを見ておくべきか」という点で、ベスト・アニメ10を選びました。といっても、やっぱりそういう観点で選ぶと、前回の記事でも紹介した「アニ軽10」
anond.hatelabo.jp
と似たようなラインナップになってしまうわけですが。
ラインナップは以下のとおりです

第1位:風の谷のナウシカ(宮﨑駿監督)

風の谷のナウシカ [Blu-ray]

風の谷のナウシカ [Blu-ray]

1位が宮﨑駿監督なのはあまりに予定調和感がありますし、きっと投票でもそういう意識が合ったから、宮﨑駿作品があまり入ってないのだろうなとは思うのですけど、でもやっぱ、宮﨑駿監督を筆頭に、参加しているスタッフがその後日本のアニメ界を代表するような人材だったという点、シナリオの完成度の高さ、そしてもちろん作画の素晴らしさ、そして後世に与えた影響、どれをとっても、やっぱりこれが1位じゃなきゃいろいろおかしなことになっちゃうと思うんですよね。いやほんと、一旦自分がどのアニメを好きだとか、どのアニメを推したいとかそういうことを抜きにして、まっさらな気持ちで「日本アニメのベストは何か」って考えてみてくださいよ。その上でまだあなたがタイバニとかまどマギとかラブライブとかを、『風の谷のナウシカ』より上だと言うんなら、僕はもう何も言いません。

第2位:新世紀エヴァンゲリオン庵野秀明監督)

毀誉褒貶あるのは認めます。僕だって、個人的な好みを言えば、TV版より映画版が好きだし、もっと言えばウテナとかのほうが好きではあります。ありますけど、でもやっぱ、あの90年代後半の時代を一身に受け、その後のアニメの文法そのものをまるごと変えてしまった影響力を考えると、ベスト10の中でも上位なのは間違いないと思うのです。

第3位:うる星やつら押井守監督)、第4位:うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー押井守監督)

あえて2作入れたのは、ある種自作自演的に、TV版がその後オタクアニメのスタンダートとなるドタバタラブコメの文法を作り上げながら、映画版でその文法を破壊して、オタクの実存に迫る私小説的シリアスさを見せつけたという点で、80年代に人口に膾炙したオタクというものの陰と陽がそのまま、この2つに込められていると思ったからです。
ぶっちゃけ80年代以降のアニメの内、オタク受けするアニメはだいたい全部うる星やつらのTV版か、ビューティフル・ドリーマーの焼き直しであると言っても過言ではないと思います。それぐらい後世に与えた影響という点でもすごい。ジブリエヴァのような知名度がないのが唯一の弱点といえば弱点かなーとは思いますが、しかしベストアニメというお題でこれを外すんなら、そのベストアニメにどれほどの価値があるのかと思ったりします。

第5位:機動戦士ガンダム 逆襲のシャア富野由悠季監督)

宮崎・庵野・押井ときたら、やっぱどこかで富野作品は紹介しなきゃならないし、宇宙世紀ガンダムもどこかで紹介しなくてはならないでしょう。ただここで問題となるのが、宇宙世紀ガンダムは、正直今までの作品と比べると古びているというか、時代によって色あせているところがあるということです。「懐かしアニメ」なら上位なのでしょうけど、今の作品とくらべてベストなのかと言われると、僕がガノタではないというのもあるのでしょうが、正直「うーん……」と答えざるを得ません。
ただ、そんな中でも逆襲のシャアは、作画・脚本どちらをとっても、傑作と呼ぶに素晴らしい、そんな作品だと思います。そして、70年代的な、正義の相対化というガンダムと、80年代的な、AKIRAにも通じる超能力・オカルトの2つの橋渡しをしているという点で、ガンダムを代表する作品でもあると思うわけです。ニュータイプという、その後の異能力アニメの先駆けとも言えるという点で、影響力も問題なし。というわけで、宇宙世紀ガンダムでは、逆シャアをランクインさせました。

第6位:機動戦士ガンダムSEED福田己津央監督)

これは異論が大きいだろうな―。もちろん、これまでの作品と比べたら、脚本・作画共に粗があるのも事実なわけですが、しかしやっぱりなんといっても、9.11直後という時代背景を舞台に、リアルっぽい政治を組み込んだ少年向けアニメという、その後現在の機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズまで続く、土6っぽさ*2、更に言うと、コードギアスとかギルティクラウンとか、あるいはPSYCHO-PASSとか虐殺器官とかに連なる系列のアニメを生み出したという点で、後世への影響力は段違いなものがあると思うんですね。また、J-POP歌手をOP・EDに起用したり、美男美女を用意したりして、「オタクだけど別にスクールカースト下位ではない」という、人種を生み出したのも、ガンダムSEEDだったと思うのです。涼宮ハルヒの憂鬱とかのフィーバーも、ここらへんの礎があったからこそ。物語も、もちろん王道ではないですが、しかし日本のアニメというのは、そもそも王道を嫌ったケレン味こそを持ち味としてきたわけで、そういう点では王道ではないけど日本アニメの本流ではあり、そしてそのケレン味はやっぱり今見ても面白い。年長世代、とくに宇宙世紀ガンダム好きのガノタの人々を怒らせたとしても、これを入れないと、日本アニメの重要な部分を見逃すことになってしまうと、そう思うわけです。

第7位:らき☆すた山本寛監督→武本康弘監督)

ゼロ年代後半、ニコニコ世代の象徴です。涼宮ハルヒではまだかろうじてあった、物語へのこだわりというものがもはやない、あるのはMAD素材の組み合わせ。80年代、あらかじめ終止符を打たれてゾンビとして世の中を徘徊していたオタクという人種が、まさにここで心臓に杭を打たれ、「ヲタ」という動物に戻ってしまうわけです。らき☆すた以前とらき☆すた以降では、アニメというものの見方が全く異なってくるわけで、現代オタクを語るなら、ここは外すことはやはりできない。作品の質という点では、受け付けるのに少々、見方の工夫が必要になるかもしれませんが、しかしそこで、「今時のオタクはどうやってアニメを見ているか」を学べるという、教材という意味でも、一度は見ておくべきじゃないかなと思うわけです。見た上で、「こんなアニメを面白がる今のオタクは糞だ!」と怒ってもいいですし。

第8位:けいおん!山田尚子監督)

現在のアニメの一大潮流となっている日常系というものは、まさしくここで完成していたわけです。それまでアニメのメインテーゼであった、「成長」というものに全く背を向けたその作品は、まさしくあのデフレ・低成長時代にマッチしていたわけです。そして何より京アニが全力を出した演出。日本アニメが、動きの表現とかそういう派手なものの裏でずっと大事にしていた、空気感を伝える背景・作画が、この作品にはあるわけです。
まあ正直まだ歴史的評価が定まってない作品ではあるので、ベストアニメに選ぶのは勇み足なのかもしれませんが、しかしやっぱこの日常系というものの到達点は、ベストアニメで触れておきたいというわけで、選んでみました。

第9位:スレイヤーズ(渡部高志監督)

正直これは「あえて」で選びました。何に対してのあえてかと言うと、90年代=エヴァという風潮に対してのあえてです。
90年代というとどーしてもエヴァ的な「闇」っぽさが兎角クローズアップされがちなんですが、しかしエヴァってどっちかというと90年代の終わりごろに出てきた作品で、エヴァフォロワーはそれより更に後、場合によってはゼロ年代にかぶってきちゃうわけです。じゃあエヴァ以前の90年代が一旦どういう時代だったか、それを象徴するのが、林原がそれまでの林原らしい勝ち気な女性を演じてる、この作品じゃないかと思うわけです。
といっても、他にもデ・ジ・キャラットとか、アキハバラ電脳組とか、あるいは無責任艦長タイラーとか、他にもこの時代っぽいアニメはあるわけです。そして、この時期っていうのは、ビューティフル・ドリーマーエヴァという二大作品に挟まれた、アニメ批評の空白域とも言えまして、正直万人が納得する代表作を選ぶのは困難に近い。
ただそんな中で、やっぱ林原という存在を考えると、スレイヤーズが一つ抜きん出てるのではないかと思うわけです。ただ、リアルタイムにこの時期アニメを見ていた人なら、もっと違う作品こそを90年代前半~中盤の代表作に選ぶのかもしれません。その場合、異論は認めます。
ただ、やっぱりビューティフル・ドリーマーエヴァの間に何かあった気がして、しかしその時期をみんな忘れてしまっているならば、そこをあえて思い起こさせるのは、ベストアニメに求められることだと思うのです。

第10位:AKIRA大友克洋監督)

AKIRA 〈Blu-ray〉

AKIRA 〈Blu-ray〉

これに関しては、もう圧倒的にアニメの質という点で選びました。いや、もちろん後世への影響力とか、時代の雰囲気の反映とかもあるのでしょうが、その点からするとこのアニメより上は多いわけで、やっぱ圧倒的な作画・演出が、この作品を選んだ何よりの決め手になります。
アニメっていうのは総合芸術なわけで、絵・脚本・演技・劇伴全てが素晴らしいこの作品は、まさに日本のアニメの到達点だと思います。

選外作品について

後世に与えた影響という点では、宇宙戦艦ヤマト世界名作劇場、あるいはあしたのジョーとか、監督名で言うなら大塚康生氏とか出﨑統氏とかの作品も取り上げるべきなんでしょうが、正直今のアニメになれちゃうと、どーにもいろんな点で見劣りしちゃうと、個人的には思うのです。作り手になったり、ハイアマチュアを目指すならこれらの監督の作品を見て、制限多い時代だからこそ際立つ演出技法とかを学ぶのはマストかもしれませんが、万人に勧めるべき作品なのかというと、個人的にはそこまで学ばなくてもいいんじゃないかと思うのです。

ココらへん、僕が個人的趣味で選ぶのならもちろん選ぶんですけどね―。後世に与えた影響という点ではやっぱり劣っちゃうかと。

もちろん辻真先先生とか、個々でマニアックに楽しむ点はあるとは思うのだけれど、現代のアニメの流れとは隔絶しちゃってるんですよねぇ。

もちろん個別の作品としては傑作だと思う、思うのですが、新奇性も、ファンが言うほどはないと自分は思っていたり、後世への影響も、エヴァとかに比べるとぶっちゃけそんな大きなものではなかったなと。、良くも悪くも、エヴァのころと比べて、作品が多様化しているというのもあるのですが。

社会現象という点では申し分ないです。でもお話になにか新奇な面白い所があったかというと……

ここらへんの作品は、個人的には大好きなんですが、フォロワーがどうもついてこない印象があります。なんか一つの集団内でずっと続いてきた系譜であって、それ以上でもそれ以下でもないという感じ。メジャーまではいくんですが、社会現象までにはならないというか。

いや冷静になってください。

*1:100紹介するのはさすがにきつい

*2:というとゾイドを上げる人が居るかもしれないけど、でもやっぱりあの土6独特の雰囲気は「ガンダムSEED」から始まったわけで