なんか最近はてな・Twitter界隈では「男は少女マンガを読まないか」論争というものが盛んらしくて、一方の人たちが
「女は少年マンガも少女マンガも読むが男は少年マンガしか読まない。これはまさしく男たちが自分と異なる価値観のものを受け入れようとしない現れだ」
と言えば、他方の人たちは
「いや男だって少女マンガ読むよ」
と言い、それに対してまた別の人たちが
「男が読む少女マンガって結局本流の少女マンガじゃないものばっかじゃん」
と返すという、そんな議論の応酬が行われているそうです。
で、じゃあ一応男性である僕はどうかというと。
「一応どっちも読むけど、そもそも、少年マンガか少女マンガということを気にして読むマンガ選んだことないなぁ」というものでした。
僕にしてみると、少年マンガとか少女マンガとかいうのは、例えばスポ根ものとかSFものとかというように、マンガの中のジャンルの一つなわけです。
で、それぞれのジャンルの特徴は
- 少年マンガ……「運動神経が良ければ偉い」「ケンカが強ければ偉い」「よりモテたほうが偉い」「会社の中でより多く仕事をして、より出世した方が素晴らしい」みたいな価値観に基づく競争が描かれた漫画
- 少女マンガ……「理想の彼氏・結婚相手を見つけるのが幸せ」「かわいく美しくあるのが正義」みたいな価値観に基づく自己研鑽が描かれる物語
と、大雑把にいえば分けられると思うわけです。
でも、正直僕はそういう少年マンガの主流派的な価値観に乗れなければ、かといって少女マンガの価値観にも乗れないわけで。
そういう人間が何を読むかといえば、「少年マンガ誌に連載されるけど少年マンガっぼくないマンガ」「少女マンガ誌に連載されるけど少女マンガっぼくないマンガ」なわけです。
例えるならそれは、
「別にスポーツできなくたって彼女出来なくたって楽しきゃいいじゃん」
「仕事ないニートで何が悪いのさ」
みたいな少年マンガであったり、
あるいは
「男にもてるために頑張るとかだりー」
「独身で好きなことしてりゃ良くない?」
みたいな少女マンガだったり。
そして、僕が思うに、「男だけど少女マンガ読むよ」とか言う人の半分くらいは、その実上記のような、「主流の価値観について行けないから、マイノリティな価値観の表現を好む人」じゃないかな?と、思うわけです。
要するに、
「少女マンガ的な価値観に乗れるから少女マンガを好む」
のではなく、
「少年マンガの主流派の価値観にのれないから、逃避先として少女マンガを選んでいる」
人たちが、「男だけど少女マンガ読むよ」という人たちの中には一定数いるんじゃないかなと。
でもそれって、本当に少女マンガの主流が好きな人からすれば、「おまえら少女マンガの本当の面白さわかってないじゃん。」となるわけで。
まあそこら辺が、この議論がこじれるポイントなのかなーと、思ったわけです。
でもまあ、僕からすると「楽しむために読むマンガでわざわざそんな『自分と異なる価値観だけど、異文化理解のために読もう』なんて気負うのつらくね?」とも思ってしまうわけです。
いや、一時期やろうとしたことあるんですよ。そういうこと。「自分と異なる価値観でも毛嫌いしてちゃだめだ」と思って、自分とは全然異なる価値観である、『島耕作』とか『働きマン』とか読んだことが。
でもやっぱだめ。ほんと主人公の価値観に徹頭徹尾反発しちゃうわけで、異文化理解どころか、「やっぱこういう仕事中毒人間はおかしい。こういう人間にはなりたくないし、近づきたくすらない」という偏見が強化されるだけなわけです。
だから、「男性は女性を理解するために王道少女マンガを読め」とか言われても、「それ、よほど少女マンガを読む男性に理解がない限り、男性側のミソジニーが強化されるだけだよ」と思うわけです。
というわけで僕の結論としては
- 「男だけど少女マンガ読むから俺は女性のこと分かってる」とかいう男は確かにウザイ。うぬぼれんな
- でもだからといって「じゃあ王道少女マンガ読んでやるよ」と強がって読んでも、自分の中にあるミソジニーが強化されるだけで、あんまり意味ないよ
- 結局おとなしく自分の好きなものを読んでればいいじゃん
というところでしょうか。
付け加えるなら、「王道少年マンガ」「王道少女マンガ」の二つに分けられない、どちらにも乗れないあわいのような位置にあるマンガが僕は好きなので、そういう身からすると「少年マンガ」「少女マンガ」という区分けなんかなくなっちゃえばいいのになーと思うわけですが、こういう議論が盛んになるということは、まだまだそういう区分けが必要な人がいるんだなーという気づきが、今回の論争では得られました。
「男だけど少女マンガ読むよ」というとまず最初に連想するのって橋本治だよね。でも実際に少女マンガについてどういう評論書いてるのかは知らん。今回の記事を書くにあたって読んでみようかと思ったけどまあいいか。